高い枕が好きな人が知るべきこと|整形外科医が解説する適正値と脳卒中リスク
16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。

普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えします。
目次
「高い枕が好き」「高くないと寝れない」——その好みが症状の原因かもしれません
一か月に二個は枕を購入するという、自称「枕中毒」の患者さんがぽつりとおっしゃいました。
「枕の合う、合わないは、素材じゃないのかもしれない。これだけとっかえひっかえ試してみても、ほんとうに合うものは見つからないんですからねぇ」

この方は長い試行錯誤の末、「枕選びは素材ではなく高さが大事」というところまではたどり着いていました。アンケートでも、オーダーメイド枕を注文された方に「重要な枕の条件は?」と聞くと、1位「高さ」(88.4%)、2位「硬さ」(66.8%)という結果が出ており、多くの方が問題意識を持っています。
しかし、もう一歩突っ込んで聞くと、気になる問題が浮かび上がります。
「私は昔から高めの枕が好きなんですよ」
「枕はやっぱり硬いほうがいいですね。旅先でふわふわだと気持ちが悪くて……」
やはり「好み」が先行してしまっているのです。
「高めが好き」程度ならまだいいのですが、これがエスカレートして「高い枕じゃないと眠れない」となってしまうと困りものです。そのこだわりこそが、枕不眠や首の症状の元凶になっていることもあるからです。
また、「うつ伏せで寝るので枕は低くしてください」と言い切る患者様もいらっしゃいます。しかし整形外科医の立場からはっきり申し上げます。「そう思い込んでいらっしゃるだけですよ」と。

誰でもひと晩に何度も寝返りを打つもの。朝までずっとうつ伏せで眠ることなどありません。うつ伏せ寝が習慣になっている方でも、枕を適切な高さに調節すると、すぐに上向き・横向きの範囲内で眠るようになります。「好みの寝方」と思っていたものが、実は「合わない枕のせいで仕方なく選んだ姿勢」だったことがわかるのです。
「高め・低め」はNG!適切な高さの目安と「9割が集中する範囲」
では、適切な枕の高さとは一体どのくらいなのでしょうか。当研究所が持つ膨大な計測データによると、性別ごとの適正な高さの平均値は以下のようになっています。
男性の適正値目安
平均 7.5cm(約9割の方が 7.0~8.5cm に集中)
女性の適正値目安
平均 6.0cm(約9割の方が 5.5~7.0cm に集中)
驚くべきことに、全体の約9割もの方が「わずか1.5cm」という非常に狭いストライクゾーンの中に収まっているのです。この事実からも、「高め・低め」という大雑把な分類がいかに無意味であるかがお分かりいただけるでしょう。
ただし「自分は男性だから7.5cmにしよう」と平均値を鵜呑みにするのは要注意です。身長・体重・体格・猫背の有無によって、適正な1点は一人一人異なります。平均値はあくまで「最初の目安(基準点)」であり、そこから5mm単位の微調整が不可欠です。
▼ 体格別の詳しい見分け方はこちら
枕の高さの目安は男性7.5cm・女性6cm|平均値の正しい使い方と体格別の調整法あなたに「ジャストフィット」する枕の高さ、プロの技術で計測してみませんか?
「高め・低め」というアバウトな選び方ではなく、医学的研究と臨床経験の中で生まれた計測方法を用いて、専門知識を持つ枕診断士が一人ひとりの体格に合わせた適切な高さを正確に計測・ご調整いたします。
枕診断士が一人ひとりに高さを計測
高い枕と低い枕、本当はどちらが良い?正解は「高さより体格への適合」
診察室で「先生、高い枕と低い枕、結局どちらが身体に良いんですか?」というご質問を本当によくいただきます。また、他院で「高めの枕にしなさい」「低めの枕を使いなさい」と指導され、それを試したら逆に首の痛みや肩こりが悪化してしまったという患者様も絶えません。
最初にはっきりとお伝えしたいのは、枕の良し悪しは「高い」「低い」「高め」「低め」といった、そんなアバウトな話ではないということです。

枕の高さは、一人一人の体格に合わせて「ミリ単位」でジャストフィットさせるべき、非常に繊細なものです。わずか5mmのシートを1枚追加するか、あるいは抜くかによって、寝心地はもちろん、首の症状、肩こり、頭痛、手のしびれ、腰痛といったあらゆる身体のサインが劇的に変化してしまうのです。
つまり「高い枕と低い枕どちらが良いか」という質問への正しい答えは、「あなたの体格に合っているほうが良い」です。高いことでも低いことでもなく、「体格に対して適切か」——それだけがすべてです。
高すぎる枕は命に関わる?「殿様枕症候群」の深刻なリスク
「自分は高い枕が好みだから」と、平均的な高さを大きく超える枕を使い続けることには、首や肩の痛みだけでなく、命に関わる深刻なリスクがあることが最新の医学研究で明らかになりました。
2024年2月に国立循環器病研究センターの研究チームが発表した論文によると、高すぎる枕の使用は脳卒中の原因の一つである「特発性椎骨動脈解離」の発症リスクを高めることが指摘されています。これは「殿様枕症候群(Pillow Syndrome)」と呼ばれ、今まさに医療界とSNSで大きな注目を集めています。
【論文が示す枕の高さによるリスク上昇】
適正値の平均が男性7.5cm・女性6.0cmであるのに対し、それを大きく超える枕を使い続けると、首が強く前屈し後ろ側の血管(椎骨動脈)が常に引っ張られた状態に。そこに寝返り時のねじれが加わることで、血管壁が裂けやすくなると考えられています。
メカニズムの詳細・12cm/15cmでの実証実験映像は、専門コラムで詳しく解説しています。
▼ 殿様枕症候群のメカニズムと医師による実証実験動画はこちら
枕が高いと危険?殿様枕症候群と12cm・15cmのリスクを医師が解説【徹底比較】わずか5mmの高さの差で変わる寝返り(動画検証)
血管への負担だけでなく、日々の睡眠の質に最も直結するのが「寝返りの打ちやすさ」です。首の血管を傷つけず、筋肉に余計なエネルギーを使わせないためには、寝返りがスムーズに打てる高さでなければなりません。わずか5mmの高さのズレが、寝返りにどれほどの差を生むのか、実際の比較動画をご覧ください。
この「たった5mmの差」が、一晩の眠りの質と、翌朝の身体の軽さを劇的に決定づけるのです。
ドクター考案の『整形外科枕』による症状の改善
山田朱織枕研究所では整形外科枕という、睡眠姿勢によるさまざまな症状の改善を目的としたオーダーメイド枕を提供しています。
整形外科枕は16号整形外科の山田朱織医師監修のもと、開発されました。
好みを重視するのではなく、お体格に合わせることが重要です。
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「枕外来のオーダー枕」
私の枕外来には、朝から肩がこる、枕が合わない、何度も目が覚めるという患者様が沢山来院します。好みで枕を選んでいませんか?首を休めるための枕は、体格によって適合する高さが違います。
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医療者の皆様へ:患者様へのアバウトな提案は症状を悪化させます
もしこのコラムを、医師、理学療法士、看護師といった医療従事者やセラピストの皆様がご覧になっていましたら、ぜひ明日からの患者様へのアドバイスを変えていただきたいと切に願っています。
「高めの枕にしてみて」「低いほうが首にいいよ」といった大まかな提案は、患者様を迷わせ、結果として合わない高さによる症状悪化を招きかねません。これからはぜひ、「枕は一人一人の体格によって適切な高さが異なるため、ミリ単位(5mm単位)でフィッティングを繰り返して適切な1点を見つけましょう」と指導してあげてください。それが、患者様の健康を守る正しい姿勢ケアの一歩となります。
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「山田朱織(やまだしゅおり)とは?」
16号整形外科院長 医学博士
㈱山田朱織枕研究所 代表取締役社長 マクラ・エバンジェリスト
治療の一環として枕を指導する「枕外来」を開設し、睡眠姿勢や枕の研究を行っております。普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えしております。

