ぎっくり腰の正しい寝方・枕の高さ・安静期間を整形外科医が解説
16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。

普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えします。
ぎっくり腰(急性腰痛症)を起こしたとき、「どんな姿勢で寝ればいいのか」「枕の高さはどうすればいいか」「いつまで安静にすればいいか」——こうした疑問を外来でよく受けます。このコラムではぎっくり腰の急性期に整形外科医として実際にお伝えしていることをまとめました。
目次

ぎっくり腰はどうして起きるのか
前かがみで重いものを持ち上げた時、あるいはそのまま体をひねった瞬間など、瞬間的に大きな力が悪い姿勢でかかるときに起こることがよくあります。
しかし、特別な負荷をかけていなくても起こることもあります。朝起き上がろうとしたら既にぎくっとやってしまっていた、靴下を履こうとした瞬間に来た、といったケースです。大した原因がないのに起こることも珍しくありません。
また、腰だけでなくお尻から足にかけて痺れが走る、指先に力が入らない、歩くときにつまずくなど、症状が下半身に広がっている場合には、単純なぎっくり腰ではなく、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気が背景に隠れている可能性があります。

さらに少数ではありますが、骨粗鬆症による圧迫骨折、あるいは背骨の悪性腫瘍が原因でぎっくり腰のような症状が出ることもあります。症状が続く場合や下肢の症状を伴う場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。
ぎっくり腰の正しい寝方・寝る姿勢
ぎっくり腰の急性期に最も大切なのは、腰への負担を最小にした姿勢で横になることです。椅子に座った状態では腰の完全な安静はとれません。以下に、上向き・横向きそれぞれの正しい寝方を説明します。
上向き寝:膝下枕と枕の高さが重要
上向きで寝る場合、最も重要な2つの条件があります。
条件1:膝の下に膝下枕を入れてセミファーラー姿勢をとる
特にぎっくり腰の急性期には、骨盤と腰椎をつなぐ大腰筋という筋肉を緩めてあげることが重要です。膝の下にロール状の膝下枕を入れて股関節から足を少し曲げた姿勢——これを「セミファーラー姿勢」と呼びます——をとることで、大腰筋の緊張が解けて腰が楽になります。

山田:これだと腰が楽ではないですか?
モデル:すごく腰がリラックスしています。
条件2:枕の高さを体格に合わせて正しく設定する
膝下枕で腰をリラックスさせても、頭の枕の高さが合っていなければ背骨全体のラインは整いません。枕の高さを体格に合わせて適切に設定することで、頭から腰まで全体がリラックスした状態になります。
また、枕の高さが適切に合っていると、寝返りをうつときに腰に走る痛みも軽減されます。ぎっくり腰の安静中でも何度も体の向きを変えなければなりませんが、枕の高さが合っていればそのたびの痛みの負担が変わります。
上向きが辛い場合は横向きで
上を向くことも辛い状況であれば、体を横向きにして安定できる位置を探してください。少し体を丸めていただいても構いません。腰が楽になる形でリラックスしてください。

寝返りがスムーズにできることも条件
ぎっくり腰の経験がある方はわかると思いますが、長時間同じ姿勢でいることは誰にとっても不可能です。安静中であっても体の向きを何度も変えなければなりません。
枕の高さが適切に合っていれば、横を向くときに痛めている腰に激しい神経痛が走らずにスムーズに寝返りをうつことができます。ぎっくり腰の安静中にこそ、枕の高さが重要になります。
安静の仕方:座るより横になる
椅子に座った状態では腰への負担は残ります。腰の安静をとるためには横になることが最も重要です。

横になる際は、上向きでは膝下枕と高さの合った枕を使ったセミファーラー姿勢、上向きが辛い場合は横向きで少し体を丸めた姿勢が基本です(前セクション参照)。
食事やトイレ以外は起き上がらず、しっかり横になって安静をとることで回復が早まります。このタイミングを誤って無理に動くと、症状が長引いてしまいます。
ぎっくり腰の安静中こそ、枕の高さが回復を左右します
高さの合っていない枕では寝返りのたびに腰に負担がかかります。
整形外科枕は5mm単位で高さを調整し、仰向けでも横向きでも背骨を正しい位置に保ちます。
安静期間の目安と運動再開のタイミング
急性期(発症後1〜3日):しっかり横になって安静に
ぎっくり腰を起こした急性期(発症後1〜3日程度)は、しっかり安静をとることをおすすめしています。仕事の調整が可能であれば2〜3日は休んで自宅で体を休めてください。このタイミングに無理をすると、症状が長引きます。
急性期以降(1週間程度):日常生活に徐々に戻す
急性期を過ぎたら、日常生活に少しずつ戻していきます。発症から1週間程度はスポーツは行わず、日常動作を徐々に増やしていくのが基本的な目安です。
痛みが完全に取れたら:軽い運動から再開する
完全に痛みが取れた時点で、軽い運動から徐々に始めてください。「腰痛には運動して鍛えた方がいい」とよく聞きますが、急性腰痛症の間は違います。まず安静、その後に段階的に活動を増やしていくことが重要です。
痛みは取れたが慢性的な腰の重さが続く方、特に朝起きた時に辛い方には、寝たまま行える体操もあります。
ぎっくり腰を繰り返す場合は背景に病気の可能性がある
ぎっくり腰を繰り返す場合は、その背景に何らかの腰の病気が隠れていることが多いです。腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・変形性腰椎症などが代表的です。
この場合、まずその背景にある病気を正確に診断し、治療することがぎっくり腰の再発予防につながります。完治が難しい病気もありますが、正しく把握した上で予防対策をとることで、腰痛と上手に付き合いながら日常生活・仕事・学校生活を続けることができます。繰り返すぎっくり腰は「体質だから」とあきらめずに、一度専門医の診察を受けることをおすすめします。
ストレスがぎっくり腰の原因になることがある
近年、注目されているのが心理社会的要因と腰痛の関係です。福島県立医大脊椎専門の大谷晃司教授が指摘するように、腰痛の発生には心理社会的要因が関与している可能性があります。
心理的なストレス(メンタル)と社会的なストレス(職場・家族・人間関係)を長期間・強度に受けることで、人間は痛みへの感受性が上がります。わずかな刺激でも強く痛みを感じたり、痛みそのものへの不安が強まったりするのです。
当院に何度もぎっくり腰を繰り返して通院される方に「精神的なストレスはありませんか」とお聞きすると、驚くほど多くの方が「実は悩んでいます」とおっしゃいます。メンタルケアとストレスを和らげることが、ぎっくり腰の改善・予防においても重要な要素となっています。
なお、腰痛全体の約85%は「非特異的腰痛」と呼ばれ、画像や検査では原因を特定できないものです。このことからも、腰痛は身体だけでなくメンタル面からも複合的にアプローチすることが大切です。
まとめ
- ぎっくり腰は瞬間的な大きな負荷だけでなく、些細な動作でも起こることがある
- 下半身への痺れや脱力を伴う場合は、ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気が背景にある可能性がある
- 症状が続く場合は必ず専門の医療機関を受診すること
- 安静をとるなら座るより横になることが重要
- 上向きで寝る場合は「膝下枕でセミファーラー姿勢」と「高さの合った枕」の2点がポイント
- 急性期(発症後1〜3日)はしっかり安静をとること。運動は痛みが完全に取れてから再開する
- 発症から1週間程度はスポーツを控え、日常生活に徐々に戻していく
- 繰り返すぎっくり腰は背景に病気が隠れていることが多い——専門医の診察を
- ストレスなど心理社会的要因も腰痛の発生・悪化に関与している
油断大敵!「くしゃみ一つ」でぎっくり腰にならないための護身術
ぎっくり腰は重いものを持った時だけでなく、何気ない「くしゃみ」が引き金になることも。急激な腹圧の上昇から腰を守るために、診察室でもお伝えしている「痛めないくしゃみの仕方」を身につけましょう。
- -息を吐きながら力を抜くコツ
- -振動を逃がす「つかまり立ち」
- -椎間板ヘルニアを防ぐための備え

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「山田朱織(やまだしゅおり)とは?」
16号整形外科院長 医学博士
㈱山田朱織枕研究所 代表取締役社長 マクラ・エバンジェリスト
治療の一環として枕を指導する「枕外来」を開設し、
睡眠姿勢や枕の研究を行っております。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることを
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