整形外科医が書いた世界的に珍しい枕の英語論文—内容・結論・意義を徹底解説

16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。
私(山田朱織枕研究所代表:山田朱織)の枕に関する英語論文が2023年2月2日、ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・セラピー・サイエンスに掲載されました。整形外科医が書いた枕の英語論文は世界的にも極めて珍しく、私にとっても初めての枕の英語論文が世界に公開された歴史的な瞬間でした。
この記事では、論文の内容・結論・海外研究との比較・研究の独自性について詳しく解説します。
論文が世に出るまでの50年にわたる歴史や苦難の道のりについては、姉妹コラムで詳しく紹介しています。
→ 「50年かかった初の英語の枕論文——掲載までの歴史・研究計画・実行」はこちら
目次
Changes in neck pain and somatic symptoms before and after the adjustment of the pillow height
要約:16号整形外科(相模原市)院長の山田朱織氏らは、同クリニックが開発したSet-up for Spinal Sleep(SSS)法に基づき、個別の枕の高さを厳密に調整し、首の痛みや身体症状の変化を検討。その結果、身体的な頸部痛が有意に改善されたと J Phys Ther Sci(2023; 35: 106-113)に報告した。
枕の高さを調節する前後で、首の痛みと身体化症状がどう変化したかを検証した論文です。この論文はPubmedという英語論文検索エンジンで公開されており、「pillow」「pillow height」というキーワードで世界中の医療者・研究者が検索して読むことができます。

世界に発信!枕論文——整形外科医による枕と頚部痛の論文は極めて少ない
整形外科領域の枕論文はごくわずか
2003年当時、日本における枕の論文はごくごくわずかでした。「枕」で検索すると出てくるのは以下のようなものばかりです。
- 褥瘡用の枕
- 手術中のポジション用枕
- 赤ちゃんの窒息と枕
- 妊婦さんの横向き寝の抱き枕
- ナーシング・看護における枕の利用
- 整体と枕
整形外科領域の枕論文は、MRIでの枕比較・頚椎捻挫患者への枕・枕の素材に関するもののわずか3本だけでした。
頚椎枕研究のオリジン

世界で初めて「首のために枕を整える」という概念を提唱したのは、1940年代のルース・ジャクソン先生です。アメリカ整形外科学会初の女性会員であり、1983年にルース・ジャクソン・オルソペディック・ソサエティを設立した頚椎のエキスパートです。先生は枕に関する多数の論文・書籍を残しています。
枕に関する海外文献と山田の考え方の比較

左側が海外論文、右側が私の考え方です。大きく5つの点で違いがあります。
① 研究者の専門分野
海外論文の研究者は理学療法士・カイロプラクター・看護師・エンジニアが中心です。一方、私の論文は整形外科医が書いた点で世界的に珍しい位置にあります。
② 研究対象
多くの海外論文は症状のない20〜40代の健常者を対象にしています。私は症状がある患者様(有訴者)を対象に、10代から80代という幅広い年齢層で研究しました。
③ 枕の重要な条件
海外論文は素材・形・頭部の温度などを枕の重要条件とするものが多いです。私が最重要と考えるのは至適高さにおける寝返りのスムーズさです。
④ 枕の高さの比較単位
海外論文は5cm・10cm・14cmなど「5cm差」での比較が主流です。私は5mm違いという桁違いに細かい単位で研究しています。靴のサイズと同じ感覚です。
⑤ 枕の形状
海外論文では両サイドが高く中央が低い凹凸枕、首の下が高い縦型枕などが多く使われます。私は平らな枕が最善と考えており、寝返り時に肩が柔軟に動けること・首をカーブさせる必要がないことを主張しています。枕で最も重要なのは高さです。
親子2代で枕外来——50年の臨床知見が論文になった

私と父は親子2代で整形外科医として枕外来を行ってきました。1970年代の父の古いカルテには、枕と姿勢の重要性を患者様に説明している記録が残っています。この半世紀にわたる臨床の積み重ねが、今回の英語論文の土台となっています。
論文が完成するまでの50年の物語については別記事で詳しく紹介しています。
→ 「50年かかった初の英語の枕論文——歴史・研究計画・実行の全記録」
枕の真理をどうやって後世に残すか

私はこれまで新聞・書籍・テレビで枕の重要性を訴えてきました。しかし、それらは時間とともに消えていきます。書籍は絶版になり、テレビ映像は見られなくなる。学術論文がなければ、重要な枕の真理が世界から認知されないまま消え去ってしまう——そんな危機感が、英語論文発表への原動力になりました。
インターネット上に掲載された論文は、廃盤になることがありません。世界中の医学者・研究者がこの理論に永久にアクセスできる状態になったことが、最大の成果です。
研究プロジェクトチーム・多施設共同研究

今回の英語論文は以下の3施設による多施設共同研究です。
- 東京大学病院 22世紀医療センター(統計解析・研究デザイン)
- 倉敷成人病センター(岡山県)
- 16号整形外科(神奈川県相模原市:データ収集・実施)
総合指揮・データサイエンス・統計解析・論文調査・計画実施・データ収集まで、各施設が役割を分担して研究を完成させました。当院では受付・看護師・介護スタッフなど多くの専門家が力を合わせました。

枕の論文の結論——首の痛みが臨床的に有意に改善

本研究ではMCID(臨床的に意義のある最小変化率)という手法を用いて、枕の高さ調整前後の変化を検証しました。
主な結論は以下の2点です。
- 枕の高さを調整して臨床的に有意な頚部痛の改善が見られたのは、もともと頚部痛が強いグループでした
- 枕の変更に満足度を感じたグループほど、首の痛みと自律神経症状が大きく改善しました
つまり、枕の高さを正確に調整することで、首の痛み・不眠・自律神経症状が科学的に改善できることが証明されたのです。
英語論文を通じて伝えたかったこと
今回の英語論文で私が世界に伝えたかったことは、ひとつです。
枕の高さ調節によって首の痛み・不眠・自律神経症状が改善する——
つまり、枕は整形外科の治療道具になり得るという事実
この真実を世界中の臨床家・研究者に知ってもらい、枕を治療道具として使用してもらいたい。その意図がこの論文には込められています。
皆様のコメントや質問をお待ちしております。
姉妹コラムもあわせてお読みください
この論文が世に出るまでの50年——父の時代からの歴史、8年間の研究の苦難、論文化の難しさについては別記事で詳しく紹介しています。
50年かかった初の英語の枕論文——歴史・研究計画・実行の全記録 →-

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「山田朱織(やまだしゅおり)とは?」
16号整形外科院長 医学博士
㈱山田朱織枕研究所 代表取締役社長 マクラ・エバンジェリスト
治療の一環として枕を指導する「枕外来」を開設し、睡眠姿勢や枕の研究を行っております。
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