自覚のない肩こりを触診で発見|問診・診察・昼寝の悩みから枕計測まで整形外科医が解説
16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。

「人から肩がこってるって言われるけど、自分では全然わからない」——そんな方は、実は多くいらっしゃいます。
今回は、肩こりの自覚があまりないまま睡眠にもお悩みを抱えていた主婦の方に実際にお越しいただき、問診 → 触診 → 枕計測の全プロセスを体験していただきました。その一部始終を詳しくお届けします。
整形外科医が実際に触れてみると、本人も気づいていなかった肩こりのサインが次々と見つかりました。「押すと痛い」「感覚がわからない」——これらも肩こりの典型的なサインです。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
肩こりの自覚がないとはどういうこと?
肩こりは、自分では気づかないうちに進行していることが少なくありません。今回の患者様も、ご主人から「肩がこってるね」と言われたことはあっても、ご自身にははっきりとした自覚がない状態でした。
山田:肩こりはどんな時に辛いですか?
患者:あまり自覚はないんですよね。でも深く眠れていないのかな、とは思っています。お昼寝もしてしまうんですよ。そういうのが知らない間に肩に積もっているんじゃないかと。
山田:昼寝自体は悪いことではありません。ただ、昼寝をしないと体が持たないという状態は、夜の睡眠の質が低下しているサインです。20分程度の昼寝は効果的ですが、まずは夜にしっかり眠れることが大切です。
このように、「昼寝が習慣化している」「熟睡感がない」「朝早く目が覚める」といった症状も、肩こりや枕の問題が影響していることがあります。枕が合っていないことで睡眠姿勢が乱れ、眠りが浅くなるという悪循環が起きているのです。
問診:睡眠のお悩みと寝具環境を確認
睡眠トラブルと肩こりの意外な関係

山田:枕カルテを拝見したところ、肩こりと寝付きにも問題がありそうですね。眠りに入れないことがありますか?
患者:疲れているとすっと寝られますが、考え事があると1時間ほど眠れないこともあります。また朝は目が覚めるのですが、起きたい6時より1時間ほど早い5時に目が覚めてしまいます。
山田:6時まで寝ようとしているのに5時に覚めてしまうと、睡眠時間が短くなります。最適な睡眠時間は人それぞれ異なりますが、朝起きたときに疲労感が残っていたり、熟睡感がなかったりするなら、時間的に足りていないサインです。
書いていただいた、肩こり・寝付きの問題・早朝覚醒——これらはすべて枕との関係が深い症状なんです。枕を適切に調整することで改善できるかもしれません。
低反発マットレス・凹凸枕が肩こりを悪化させる理由

山田:今使っている枕は低反発の凹凸枕ですか?
患者:首のところがポコっとなっていて、高いところと低いところがあります。
山田:凹凸枕は不要です。凹凸がなく平らな枕の方が、寝返りが打ちやすくなります。ただし平らにしても、高さがぴったり合っていないと意味がありません。高さの計測がとても重要です。
患者:敷物は、羽毛布団2枚の上に低反発マットレスを使っています。もう5年ほどになります。
山田:低反発は確かに寝た瞬間の感触は良いのですが、寝ている間に体がじわじわと沈んでいきます。そこから大きな寝返りを打つのがしづらくなるのです。また5年使うと素材がへたって、さらに体が沈みやすくなっています。朝に腰痛を感じることはありませんか?
患者:たまにあります。
山田:それも低反発マットレスが原因の可能性があります。今日は枕の高さを5mm単位で計測しますが、枕で5mm合わせても、マットレスで5mm沈んでしまったら合わなくなってしまいます。できれば枕計測の際に低反発マットレスを外して使っていただくことをおすすめします。
また、靴下を履いたまま布団に入ることはありますか?
患者:冷えが気になるので、そのまま布団に入ることがあります。
山田:靴下を履いたまま寝ると足が纏わりつき、寝返りが打ちにくくなります。靴下を脱いで寝て寝返りを打てると末梢の血流も良くなるので、ぜひ一度試してみてください。
触診:整形外科医が体を直接確認する
問診を終えたあと、いよいよ触診に移ります。ここが、本人でも気づいていなかった肩こりが「見つかる」場面です。
首の動きのチェック

山田:まず頭を上向き・下向きにゆっくり動かしてみます。首の動きはとても良いですね。上30度・下20度とよく動いています。次に左斜めに動かします。首から手にビリビリと響くことはありませんか?
患者:大丈夫ですね。
山田:右の手にも響きませんか?
患者:大丈夫です。
首の可動域・神経への影響はこの段階では問題なし。次のステップで、本人も知らなかった「痛みのポイント」が現れます。
首の神経の圧痛点(押すと痛い場所)

山田:お首を直接触らせていただきます。首筋を押しますね。痛くないですか?
患者:痛いです。
山田:痛いですね。左はどうですか?
患者:右ほどではないですね。

山田:では首から肩にかけて押していきます。これはどうですか?
患者:そんなでもないです。
山田:肩甲骨あたりを押します。これはどうですか?
患者:痛いです。
山田:左側は?
患者:大丈夫です。
山田:今押したポイントは、首の大事な神経が通っているポイントなんです。自覚症状はなくても、押すと痛みがある——これが「気づかない肩こり」の典型的なサインです。
さらに腕のポイントも確認します。
山田:実は腕にも首の神経が来ているのですが、どうですか?
患者:あっ、痛いです。

山田:自分では触らない場所なので気づきにくいのですが、首から来る神経が手まで通っているんです。その途中の最も浅いところを走る神経を触ると痛みがある——もしかしたら肩こりに気づいていないだけなのかもしれません。
力の入り具合・感覚の左右差

山田:指の間をしっかり広げて、そのままグッと力を入れてください。力はしっかり入りますね。では手のひらを上に向けていただいて、右と左の感覚は同じですか?どちらか鈍いことはありませんか?
患者:はい、だいたい同じです。

山田:力も入っているし、感覚の障害もありません。ただ、押したときの痛み(圧痛)が右側に強く出ていて、右も左も要所要所で痛みがある。肩こりに気づいていないだけで、症状は確実にあります。頭痛はありますか?
患者:頭痛はないです。
山田:念のため頭痛のポイントも触ります。大後頭神経という首から来る頭痛の凝る場所は大丈夫そうですね。症状がよくわかりました。では次に枕の計測に移りましょう。
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触診で見つかった肩こりも、毎晩の枕を変えることで改善できます
▶ 触診で見つかった肩こり、原因は「夜間の首姿勢」にあります
自覚がなかった肩こりも、毎晩6〜8時間の睡眠中に首に負担がかかり続けていることが原因のひとつです。体に合った正しい枕を使うことで、睡眠時のトラブルや起床時の不調を回避することができます。
正しい枕の3大条件
①体格に合ったちょうどいい高さ(5mm単位)
②フラットな形状で高さを維持する素材
③定期的なメンテナンス
あなたの体に合った高さを計測して、正しい枕をお使いください。
正しい枕の3大条件を確認する →枕計測:5mm単位で睡眠姿勢を整える
計測は、山田枕研究所オリジナルの「整形外科しきふとん」の上で行います。ご自宅の布団や低反発マットとは硬さが異なりますが、寝返りを打ちやすい適切な硬さで計測することが重要です。

山田:15年以上研究して使っている布団で、これが理想的な硬さです。ご自宅の羽毛と低反発の敷物はもう少し柔らかいですよね?
患者:はい。これは腰がしっかり支えられている感じがします。
山田:このくらいしっかり腰を支えないと、寝ている間に寝返りが打ちにくくなります。では枕の計測を始めます。
上向き

山田:計測はまず上向き、次に横向き、最後に寝返りという3つの姿勢で確認します。上向きで大事なのは「喉が苦しくないか」「後頭部から首に力が入らないか」「頭が硬く感じないか」の3点です。喉は苦しくないですか?
患者:大丈夫です。

山田:ではちょっと枕を低くします。喉元がちょっと苦しくなりませんか?
患者:そうですね。

山田:では戻します。どちらが楽ですか?
患者:今の方が楽です。
山田:顎がすっと上がって喉が楽になっています。この2つの高さの違いは、わずか5mmなんです。5mmで感じ方がかなり変わるんですね。

山田:もう少し高くします。後頭部は硬く感じませんか?
患者:ちょっと硬く感じます。首の後ろに枕の角が当たる感じもあります。
山田:では5mm低くします。こちらの方が当たりはよろしいですか?
患者:はい、違いますね。
山田:喉も楽で、枕の角も当たらず、後頭部の硬さも改善されました。上向きがぴったり合っているようです。
横向き

山田:鎖骨に両手を当てて膝を立てて、そのまま左を向いてください。今、おでこから鼻・胸までの直線が、マットレスの面と平行になっています。とても良い横向きです。では5mm下げてみます。

山田:横向きで注目するのは肩の圧迫感です。普段横向きで寝るとき、肩がちょっと重苦しいと感じることはありませんか?
患者:ありますね。
山田:少し下げてみます。どうですか?
患者:肩の圧迫はそんなにないですね。

山田:逆に高くすると首筋が引っ張られませんか?
患者:はい、そうですね。

山田:右向きでも確認します。右肩を下にした場合は適切な高さが60mm、左向きは65mmとなりました。左右で違うと困りますよね。この場合は寝返りで最終的な高さを決めていきます。
寝返りで最終確認
山田:寝返りが右から左、左から右と打てたときに最適な高さこそが、夜寝るのにふさわしい枕の高さです。鎖骨に手を組んで膝を立てて、そのまま右左に転がってください。

患者:寝返りしやすいですね。
山田:肩と骨盤がほぼ同時にコロコロと動けています。とても良い寝返りです。この高さは60mmです。では5mm高くしてみます。

患者:ちょっと腰が重たい感じがします。
山田:力が入っているのが私にも伝わりました。枕が高すぎると、まるで山を登るように「よいしょよいしょ」と力が入ってしまいます。特に骨盤から大きな力を出そうとするので腰が重くなるんです。たった5mmでこれだけ違います。
患者:特に力が入ることなく回れます(60mmに戻して)。
山田:適切な枕の高さは60mmです。上向き・横向き・寝返り、すべてに合った高さです。
●整形外科枕を夫が使っていびきが治った
計測の合間に、患者様が整形外科枕を知ったきっかけをお話しくださいました。
山田:そもそも整形外科枕って、どんな形で知っていただいたんですか?
患者:知り合いからのご紹介だったんですけれども、主人が最初に購入させていただいて。主人は元々いびきがすごかったんですが、それが全く改善されまして、自分も枕を作りたいと思っていました。
患者:今は本当にいびきをしなくなったのでびっくりです。
山田:素晴らしい、ありがとうございます。いびきって、周りの方も結構辛かったりしますもんね。
実はそれはご主人様だけでなく、当院に来られる患者様の中にもいびきや無呼吸症候群の方はいらっしゃいます。その方々も、この枕を使うといびきの回数が減った、音が静かになった、中にはなくなった、という声を聞きます。
無呼吸症候群やいびきの方も、何かしら枕を使っていたり、または枕なしで寝ていたりすることが多いです。自分に合っているかわからない枕から、適切な枕に変えるというのは、一度トライしてみてもいいことではないかと思っています。
患者:主人は体型も大きいので、体型を変えなければ治らないと思っていたんですよ。痩せたりしなければ治らないと思っていたことが、枕1つで改善されて本当に衝撃的でした。
山田:無呼吸症候群って、高血圧や生活習慣病の原因にもなってしまうんです。低酸素状態は体に良くないので、十分呼吸ができているということはとても大切なことです。
患者:枕を使い始めてからダイエットしたわけでもなく痩せてもきたんですよ。やっぱり熟睡度というか、今までは熟睡できていなかったからストレスで食べていたんじゃないかなと思います。静かになったので私自身もしっかり寝れるようになりました。
山田:たまに面白い実験で、寝ている間にそっと枕を外すといびきが出ますよ。
患者:え!本当ですか?
山田:なので、おそらく治ったんじゃなくて、寝ているときに気道が確保できているのでいびきが出ないんですね。それくらい枕って、あればいいし、ないとだめという、とても顕著な例なんです。
枕の高さが合っているか自宅で確認する方法

山田:今日の計測は起きている状態で行っています。6〜7時間実際に寝てみると、高さが変わる場合があります。自宅では次の方法で確認してください。
布団をお使いの場合は壁際など動かない場所に敷いて、枕をしっかり固定してください。首の後ろに枕をきちんと当てた状態で寝入り、翌朝起きたときに枕がどこにあるかを確認するだけです。
- 寝た位置と同じ場所に頭が乗っていた→ 高さが合っている
- 枕がずれている・斜めになっている→ 高さが何らかの要因で合っていない
山田:枕がずれる場合はお気軽に枕研究所にご連絡ください。マットレスや布団との兼ね合い、筋肉の緊張が取れたことで高さが変わる場合もあります。逆に枕がずれていなければ、多少硬く感じても必ず慣れますので安心してください。
その他のアドバイス(掛物・靴下・朝の起き上がり方)

掛物について
山田:掛物は羽毛布団が一番です。軽くてふわっとしていて寝入りを妨げません。毛布を使う場合は、掛布団の中に入れるのではなく、羽毛の上に毛布をかけるようにしてください。そうすると逃げる空気を防いでより暖かく眠れます。
朝の起き上がり方

山田:朝はバッと跳ね起きてはいけません。必ず横を向いてから起きてください。一旦横向きになり、膝を下ろして手をつき、ゆっくり起き上がる。このようにすると背骨に負担なく起きられます。
肩の夜間の圧迫について
患者:この枕だと、いつもの肩の違和感がちょっとすっきりした気がします。
山田:整形外科では「夜間痛」といって夜に肩が痛む方も多いのですが、四十肩・五十肩の炎症ではなく、単に枕が合っていないために肩が圧迫されているケースも多々あります。5mm単位で高さを整えると肩への圧迫が解消されるので、今晩から使っていただいて、翌朝の肩の状態をぜひ確認してみてください。
診察・計測を終えて
山田:今回は、触診で気づかなかった肩こりのポイントがいくつか見つかりました。自覚がなくても肩こりは始まっていることがあります。ぜひ枕を使って夜間の睡眠姿勢を整えてください。体感してみていかがでしたか?
患者:この敷布団もそうですが、もう寝てしまいそうになるくらい気持ち良かったです。普段寝ることをそんなに気にしていなかったのですが、体の不調が睡眠に原因があるということを考えるきっかけになりました。
山田:なんとなく熟睡感がない、朝起きたい時間より早く目が覚める、日中に眠気が来る——こういった症状が、枕でしっかり睡眠が取れることで改善されることを願っています。
計測後、60mmの枕をお渡ししました。枕の裏側にあるアジャスターシートで、ご自宅のマットレスに合わせて5mmずつ高さを調節できます。使い方がわからなくなった場合や違和感があった場合は、お気軽に枕研究所までご連絡ください。
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「山田朱織(やまだしゅおり)とは?」
16号整形外科院長 医学博士
㈱山田朱織枕研究所 代表取締役社長 マクラ・エバンジェリスト
治療の一環として枕を指導する「枕外来」を開設し、睡眠姿勢や枕の研究を行っております。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えしております。
本コラムの内容は動画でもお話ししています▼
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