枕やマットレスを変えても肩こりが治らない理由と解決策|整形外科医が「三位一体」で解説
16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。

普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えします。
「枕を変えたのに肩こりが治らない」「マットレスを新調したら逆に悪化した」——そのような声を外来でよく耳にします。
原因はほぼ決まっています。枕だけ、あるいはマットレスだけを変えても、もう一方が合っていなければ肩こりは解消しません。枕・マットレス・自分の体、この3つが「三位一体」で初めて正しい寝姿勢が作られるからです。
目次
なぜ枕を変えても肩こりが治らないのか——「三位一体」という考え方
枕を変えれば良い睡眠がとれる、マットレスを変えれば解決する——そう考えてしまいがちです。しかし実際には、枕とマットレス(または布団)と自分の体、この3つが同時に合っていないと肩こりは改善しません。
たとえば、整形外科枕を計測・作成しても、その下にあるマットレスが20年物のへたったものであれば、枕単体がどれだけ精密に調整されていても正しい寝姿勢は作れません。逆に、マットレスを新調しても枕が古く劣化していれば、同じことが起こります。
へたったマットレスが枕の効果を台無しにするメカニズム

マットレスや布団は、毎晩同じ位置で使われ続けます。人は無意識にほぼ同じ場所で寝るため、最も体重のかかる腰・背中の部分だけが集中して汗を吸い、素材が傷んでいきます。
その結果、使用部分だけが沈んで段差が生まれます。この「轍(わだち)」のような凹みに体がはまり込んでしまうと、枕の高さや硬さの調整がどれだけ正確でも、腰が沈んだ分だけ「相対的に枕が高すぎる状態」になってしまいます。
枕をきちっと体に合うものを選んだとしても、マットレスが古かったり体に合っていないと枕の効果は台無しになります。
実際に確認:へたったマットレスで腰はどう沈むか

実際に長年使ったマットレスに仰向けで寝てみると、最も重い腰の部分がじわじわと沈み込んでいくのがわかります。腰の後ろに隙間ができ、背骨がくの字に曲がった状態です。

この状態では首の角度も変化します。腰が沈んで相対的に頭が持ち上がることで、どんなに正確に合わせた枕でも「低すぎる状態」になり、首や肩に余分な緊張が生まれます。これが「枕を変えたのに肩こりが治らない」最大の原因です。
寝返りへの影響——腰に力が入る寝返りが肩こり・腰痛を作る

腰が沈み込んだ状態では、寝返りのたびに腰で大きな力を出してから上半身が追いかけるという不自然な動きになります。この腰への過負荷が、朝起きたときの腰痛・背中の張り・肩こりの慢性化につながります。
本来の良い寝返りとは、肩と腰が同時に軽くコロリと転がれる状態です。これができるのは、マットレスが適切な硬さを保っているときだけです。
今すぐできる対処法:天地替え・裏表替えの正しいやり方
まずはマットレスや布団を買い替える前に試せる対処法があります。天地替え(頭と足の向きを入れ替える)と裏表替え(両面使えるものを裏返す)です。

天地替えをすると、これまで腰が当たっていた場所に足が来るため、劣化の少ない部分で腰を支えられるようになります。実際に試したモデルからは「腰の沈んだ感じがなくなった」「背中全体が面で支えられる感じ」という声がありました。

寝返りも「コロコロとスムーズに打てる」状態になります。
天地替え・裏表替えの推奨頻度
3ヶ月に1回、最低でも6ヶ月に1回を目安に実施してください。特定の場所への体圧と汗の集中を防ぎ、ソフト層の偏った劣化を遅らせることができます。ただしこれはあくまで予防策・応急処置です。すでに大きくへたってしまったマットレスを元に戻すことはできないため、使用10年を超えたものは買い替えを検討してください。
また、枕を計測所で合わせた場合は、必ず自宅のマットレスの上で再確認してください。計測所と自宅のマットレスの硬さが違えば、枕の高さも変わります。計測所より自宅のマットレスが柔らかい場合は枕を低めに、硬い場合は高めに調整が必要です。
マットレスを新調したのに肩こりが悪化するケース——枕側の問題

逆のパターンもあります。マットレスを新調したのに肩こりが悪化するケースです。この場合、原因は枕側にある可能性が高いです。
たとえば全層ウレタン製の枕を7〜8年使い続けると、素材がへたって本来の高さや硬さを失います。新しくて適切な硬さのマットレスの上で、つぶれた枕を使えば、首の角度が崩れて肩こりが悪化します。
「古いものへの愛着」はよく理解できますが、枕とマットレスはセットで寝姿勢を作るものです。どちらか一方が劣化していれば、もう一方をどれだけ良いものにしても効果は半減します。枕とマットレスは「三位一体(枕・マットレス・自分の体)」の考え方でセットで見直すことが解決の近道です。
よくある質問(FAQ)— 枕・マットレスと肩こりの関係
Q 枕を変えたら首や肩が痛くなりました。枕が原因ですか?
必ずしも枕だけが原因ではありません。自宅のマットレスの硬さが計測所・店頭と異なる場合、枕の適切な高さも変わります。まず「今使っているマットレスが適切な硬さか」「へたっていないか」を確認してください。マットレスに問題があれば天地替えを試み、それでも改善しなければ枕の高さ調整を行います。
Q マットレスが合わないと肩こりになりますか?
なります。マットレスがへたって腰が沈むと、背骨が「くの字」に曲がり、首・肩への負担が増します。また腰の沈み込みによって寝返りが重くなり、睡眠中の筋緊張が高まることで朝の肩こり・首こりにつながります。
Q 天地替えをすれば肩こりは改善しますか?
へたりの程度が軽い場合は改善することがあります。天地替えで腰の当たる場所が変わり、劣化の少ない部分が使われるようになるため、腰の沈み込みが軽減し寝返りがスムーズになります。ただし、10年以上使用して大きくへたったマットレスでは効果が限定的です。天地替えをしても改善しない場合は買い替えのタイミングです。
Q 枕とマットレスはどちらを先に見直すべきですか?
先にマットレスの状態を確認してください。マットレスが土台になるため、ここが崩れていれば枕をどれだけ精密に調整しても正しい寝姿勢は作れません。マットレスが適切な硬さを保っている場合に初めて、枕の高さ・硬さの調整が意味を持ちます。
Q 整形外科枕を作ったのにまだ肩こりが続きます。どうすればいいですか?
まず自宅のマットレスのへたり具合を確認してください。計測所と自宅のマットレスの硬さが違う場合、枕の高さを微調整する必要があります(自宅が柔らかければ枕を低く、硬ければ高く)。また、枕の高さ調整をしても改善しない場合は、マットレス自体の買い替えが必要なサインです。

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「山田朱織(やまだしゅおり)とは?」
16号整形外科院長 医学博士
㈱山田朱織枕研究所 代表取締役社長 マクラ・エバンジェリスト
治療の一環として枕を指導する「枕外来」を開設し、
睡眠姿勢や枕の研究を行っております。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることを
できるだけそのままお伝えしております。
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